補助金解説記事 / 補助金コンサルタント監修

早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)を獲得するための全ステップ

詳細解説 実務家監修

目的・背景:地方創生と人材確保の架け橋となる制度

日本が直面する大きな課題の一つに、東京圏への一極集中と地方の人口減少があります。この課題を克服し、持続可能な地域社会を築くため、国は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、地方への人の流れを創出する「地方創生」の取り組みを強力に推進しています。その中核的な施策が、東京圏から地方へ移住し、就業や起業を行う個人に対して支援金を支給する「移住支援制度」です。

一方で、地方の中小企業にとっては、事業の成長や承継に不可欠な専門人材や若手人材の確保が、依然として大きな経営課題となっています。都市部からの移住希望者は増加傾向にあるものの、中小企業が単独でこれらの優秀な人材にアプローチし、採用に繋げるための採用活動には、ノウハウや資金の面で多くの困難が伴います。

この「早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)」は、まさにこの課題を解決するために創設された制度です。国の移住支援制度を利用して地方に移住する意欲の高いUIJターン者を、中小企業が積極的に採用できるよう、その採用活動にかかる経費(採用パンフレット作成、就職説明会への出展、外部専門家によるコンサルティング費用など)を国が助成します。本助成金は、単に人を雇い入れたことに対する支援ではなく、「地方企業が都市部の人材を獲得するための採用力強化」そのものを支援する点に大きな特徴があります。これにより、移住者の雇用機会を拡充し、地域経済の担い手となる中小企業の成長と、移住者の安定した雇用を同時に実現することを目指しています。

対象者:どのような事業主と労働者が対象か

この助成金は、採用活動を行い、労働者を雇い入れる「事業主」と、その対象となる「労働者(移住者)」の両方が、それぞれ定められた要件をすべて満たす必要があります。計画を立てる前に、自社と採用したい人材が対象になるかを正確に把握することが、活用の第一歩です。

1. 支給対象となる事業主の主な要件

助成金の申請者となる事業主は、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

中小企業事業主であること:本助成金は、主に中小企業を支援対象としています。(資本金や従業員数による業種ごとの定義を満たす必要があります。)

雇用保険の適用事業主であること:これは全ての雇用関係助成金の基本要件です。

事前の「採用活動計画」の認定:後述する採用活動計画を策定し、活動開始前に事業所の所在地を管轄する労働局長の認定を受けていることが絶対条件です。

移住支援金対象求人の掲載:地方公共団体が開設・運営する移住支援制度のマッチングサイトに、本助成金の対象となる求人を掲載していることが必要です。

適切な労務管理:

- 計画期間の開始前6か月から支給申請書提出日までの間に、事業主都合による解雇等(退職勧奨を含む)を行っていないこと。

- 同じ期間に、特定受給資格者となる離職者(倒産・解雇等)の数が、被保険者数の6%を超え、かつ4人以上発生していないこと。

不支給要件への非該当:過去5年以内の助成金不正受給、労働保険料の滞納、労働関係法令の重大な違反、風俗営業等、暴力団との関係など、各種助成金に共通する不支給要件に該当しないことが求められます。

2. 支給対象となる労働者(UIJターン移住者)の主な要件

計画期間中に雇い入れる労働者が、以下のすべての要件を満たす必要があります。

移住支援制度の利用者であること:本助成金の根幹となる最重要要件です。採用する方が、内閣府のデジタル田園都市国家構想交付金を活用した地方公共団体の「移住支援事業」を利用する移住者である必要があります。これは、応募者本人への確認や、地方公共団体への照会等で必ず確認が必要です。

東京圏からの移住者であること:住民票を移す直前の10年間のうち通算5年以上、東京23区に在住または東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)から23区へ通勤していた方などが対象となります。

新規学卒者ではないこと:既に社会人経験のある中途採用者を対象としており、新規学卒者や、新卒者と同一の採用枠で採用された方は除外されます。

計画期間中の雇入れであること:労働局に届け出た計画期間内に雇い入れられていることが必要です。

正規雇用のフルタイム労働者であること:雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、期間の定めのない労働契約で雇い入れられる必要があります。パートタイム労働者は対象外です。

継続雇用の見込みがあること:雇入れ後、1年以上継続して雇用されることが確実であると認められる必要があります。

過去に申請事業主と関係がないこと:

- 雇入れ日の前日から遡って過去1年間に、申請事業主やその関連企業(親子会社など)で雇用されていた者ではないこと。

- 申請事業主の代表者または取締役の3親等以内の親族ではないこと。

専門家からのアドバイス:対象労働者の要件で最も重要なのは、その方が本当に「移住支援制度」の対象者であるかどうかの確認です。採用選考の段階で、本人に地方公共団体へ移住支援金の申請を行う意思があるか、またその対象要件を満たしているかを丁寧に確認することが、後のトラブルを防ぐ上で不可欠です。

対象にするために:助成対象となる採用活動とは

本助成金は、事業主が計画期間内(6か月以上12か月以内)に実施した、UIJターン者の採用に特化した活動の経費を支援するものです。計画書に盛り込み、助成の対象となる活動は以下の4つです。

募集・採用パンフレット等の作成・印刷

UIJターン希望者に対して、自社の魅力や地域の生活環境などをアピールするための印刷物作成費用です。単なる求人票ではなく、企業のビジョン、社員インタビュー、地域の魅力などを盛り込んだ、訴求力の高いパンフレットやリーフレットの作成が想定されます。

自社ホームページ・PR動画の作成・改修

ウェブサイトはUIJターン希望者が最初にアクセスする重要な情報源です。採用活動に特化したページの新規作成や、既存ページのリニューアル、企業の風土や仕事内容を伝えるPR動画の制作・改修にかかる費用が対象となります。

就職説明会・面接会・出張面接等

都市部で開催されるUIJターンフェアへの出展料や、移住希望者を対象とした自社説明会の会場借上料、採用担当者が出張して面接を行う際の交通費・宿泊費などが対象です。オンラインでの説明会・面接会にかかるツールの導入費用(一部)や参加費も含まれます。

外部専門家によるコンサルティング

UIJターン採用を成功させるための専門的なノウハウを取り入れるための費用です。具体的には、以下のようなコンサルティングが対象となります。

採用戦略の立案:社会保険労務士や中小企業診断士による、都市部の人材に響く採用戦略や人事制度の構築支援。

求人広告の作成支援:民間有料職業紹介事業者等による、求人票の魅力的な書き方や効果的な広告出稿に関するコンサルティング。

採用後の定着支援:移住者の受け入れ体制や育成計画の策定に関するコンサルティング。

必要書類:計画から支給申請までの完全ガイド

本助成金の手続きは、事前の「計画フェーズ」と、計画期間終了後の「支給申請フェーズ」の2段階に分かれています。

フェーズ1:採用活動計画書の提出時に必要な書類

以下の書類を、計画期間の開始日の前日から遡って6か月前の日から、計画開始日の前日までに、管轄の労働局に提出します。

早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)計画書:助成対象となる採用活動の内容、期間、見込み費用などを記載するメイン書類です。

その他、労働局が求める書類:事業内容がわかるパンフレットなど。

フェーズ2:支給申請時に必要な書類

計画期間が終了した日の翌日から2か月以内に、以下の書類を提出します。

支給申請書:助成金の支給を申請するためのメイン書類です。

実施した採用活動の内容と費用を証明する書類:

- パンフレット作成費:契約書、請求書、領収書、作成したパンフレット現物など。

- ホームページ改修費:契約書、請求書、領収書、改修前後のページがわかる印刷物など。

- 説明会出展費:出展申込書、請求書、領収書、当日の写真や配布資料など。

- コンサルティング費:契約書、請求書、領収書、実施されたコンサルティングの内容がわかる報告書など。

雇い入れた対象労働者に関する書類:

- 雇用契約書または雇入通知書。

- 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿。

- 対象者が移住支援制度の利用者であることを証明する書類(地方公共団体が発行する証明書の写しなど)。

支給要件確認申立書:各種助成金共通の、要件を満たしていることを誓約する書類です。

専門家からのアドバイス:経費に関する書類は、「何のために、いつ、いくら支払ったか」が第三者から見て明確にわかるように整理しておくことが極めて重要です。請求書や領収書には、但し書きを具体的に(例:「UIJターン採用向けパンフレット印刷代として」)記載してもらうよう、発注先に依頼しましょう。

必要手続き:計画から助成金受給までのロードマップ

助成金を受給するまでのプロセスを、時系列に沿って具体的に解説します。各ステップの期限管理が成功の鍵です。

【STEP 1】採用活動計画の策定と提出

どのような採用活動を、いつからいつまで(6~12か月間)行うかを具体的に計画し、「計画書」を作成します。作成した計画書は、計画開始日の前日までに管轄の労働局に提出します。

【STEP 2】計画の認定

労働局が提出された計画書の内容を審査し、要件を満たしていると判断されれば認定通知が届きます。**この認定を受けてからでなければ、その後の活動は助成対象となりません。**

【STEP 3】採用活動の実施と対象者の雇入れ

認定された計画書に沿って、採用活動(パンフレット作成、説明会出展など)を実施します。並行して、移住支援制度のマッチングサイト等を通じて募集を行い、対象となるUIJターン移住者を計画期間内に雇い入れます。活動にかかった費用の契約書や領収書はすべて保管しておきます。

【STEP 4】支給申請

計画期間が終了したら、速やかに支給申請の準備に取り掛かります。申請期限は、計画期間の終期の翌日から起算して2か月以内です。この期限を1日でも過ぎると申請できなくなるため、厳格なスケジュール管理が必要です。

【STEP 5】審査・支給決定・入金

提出された書類に基づき、労働局で審査が行われます。審査には通常数か月を要し、無事に支給が決定されると通知が届き、指定した口座に助成金(上限100万円)が振り込まれます。

まとめ:採用力強化と地域貢献を両立する戦略的活用

早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)は、地方の中小企業が抱える「人材確保」という大きな課題に対し、国の「地方創生」という追い風を活かして取り組むことを可能にする、非常に有効な支援策です。

この制度を最大限に活用することで、企業は以下の大きなメリットを得られます。

採用コストの大幅な軽減:これまで費用面で躊躇していた本格的な採用活動(パンフレット作成、都市部での説明会参加など)に踏み出すことができます。

優秀な人材へのアプローチ:地方での新たなキャリアを求める、意欲と経験を兼ね備えた都市部の人材に直接アプローチする機会が生まれます。

企業の魅力の再発見と発信:採用活動計画を立てる過程で、自社の強みや働く魅力を再認識し、それを効果的に外部へ発信するノウハウが蓄積されます。

地域社会への貢献:移住者の雇用を創出し、定着を支援することは、地域経済の活性化に直結する重要な社会貢献活動です。

成功の鍵は、事前の綿密な「採用活動計画」の策定と、**雇い入れる人材が「移住支援制度の対象者」であることの正確な確認**、そして**活動経費に関する証拠書類の徹底した管理**にあります。手続きに不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家や、管轄の労働局に相談しながら進めることが賢明です。この制度を戦略的に活用し、企業の成長と地域の未来を担う人材の確保を実現してください。

補助金・助成金に関するよくある質問

この補助金を自社で使えるか確認するにはどうすればよいですか?

補助金には「対象事業者」「対象経費」「補助率・上限額」「公募期間」という4つの基本条件があります。まず対象事業者要件(業種・従業員数・資本金など)を確認し、次に自社で予定している投資や経費が対象経費に該当するかを公募要領でチェックしてください。判断に迷う場合は、認定経営革新等支援機関や補助金申請の実務経験がある行政書士・税理士への相談が確実です。

補助金の申請にはどのような書類が必要ですか?

一般的には「事業計画書」「見積書(相見積もりが必要な場合あり)」「登記簿謄本(法人の場合)」「直近2期分の決算書」「経費明細書」「納税証明書」などが必要です。補助金ごとに追加書類が指定されるため、必ず最新の公募要領で確認してください。GビズIDプライムが事前に必要な電子申請の補助金も増えています。

補助金の申請から入金までどれくらいかかりますか?

標準的には、申請から採択発表まで1〜3ヶ月、採択後の交付決定・事業実施・実績報告・確定検査を経て入金まで、全体で6ヶ月〜1年程度かかるのが一般的です。補助金は原則「後払い(精算払い)」のため、事業実施中の資金繰りも事前に計画しておく必要があります。

採択率を上げるために最も重要なポイントは何ですか?

(1) 公募要領を隅々まで読み込み加点要素を漏らさない、(2) 事業計画の数値目標を具体的に書く(売上・生産性・雇用など)、(3) 補助事業の必要性・効果を経営課題と結びつけて論理的に説明する、(4) 早めに準備を始めて推敲する時間を確保する、(5) 認定経営革新等支援機関や補助金専門家のチェックを受ける。この5点が採択率を大きく左右します。

申請が不採択だった場合、再申請はできますか?

多くの補助金は同一年度内・翌年度でも再申請が可能です。不採択通知には通常、不採択理由の概要が示されているので、その点を重点的に修正して次回公募に再チャレンジしましょう。特に事業計画の論理性・数値目標の具体性・加点項目の取得は、改善により採択につながることが多い要素です。

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