補助金解説記事 / 補助金コンサルタント監修

3-3早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)

詳細解説 実務家監修

Tuesday, September 02, 2025

3-3早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)を獲得するための全ステップ
目的・背景:なぜ今「中途採用の拡大」が求められるのか

現代の日本企業、特に中小企業は、深刻な人手不足という構造的な課題に直面しています。少子高齢化の進展により労働力人口が減少する中で、企業の持続的な成長を支えるためには、もはや新卒採用だけに頼るのではなく、多様な経験や専門スキルを持つ即戦力人材、すなわち「中途採用者」をいかに確保・定着させるかが経営の最重要課題となっています。

しかし、多くの中小企業では、中途採用者向けの雇用管理制度(評価・処遇、研修、キャリアパスなど)が十分に整備されておらず、採用した人材が能力を最大限に発揮できなかったり、早期に離職してしまったりするケースが少なくありません。

この「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」は、こうした課題を解決するために設計された、極めて戦略的な制度です。本助成金の目的は、単に採用人数を増やすことだけではありません。中途採用者が新規学卒者と何ら遜色なく、安心して能力を発揮できるような「雇用管理制度の整備」を促し、その上で実際に「中途採用率の拡大」を実現した事業主に対して、まとまった額の助成金を支給することにあります。

このコースは、企業の採用体質そのものを改善し、経験豊かな人材が活躍できる職場環境を構築することへの投資を国が支援するものです。特に、以下の2つのアプローチが用意されており、企業の戦略に応じて選択できます。

コースⒶ 中途採用率の拡大: 全体の中途採用比率を大幅に引き上げる取り組みを支援します。

コースⒷ 45歳以上の中途採用率の拡大: 特に豊富な経験を持つミドル・シニア層の採用を促進し、さらに離職前より高い賃金で処遇することを支援します。

この解説では、本助成金を活用して、企業の成長を加速させる戦略的な中途採用を成功させるための全ステップを、専門家の視点から詳細に紐解いていきます。

対象者:どのような労働者と事業主が対象か

この助成金は、採用する「労働者」と、採用する「事業主」の両方が、それぞれ定められた要件をすべて満たす必要があります。計画を立てる前に、自社と採用したい人材が対象になるかを正確に把握することが最初の重要なステップです。

1. 支給対象となる事業主の主な要件

助成金の申請者となる事業主は、以下の要件を網羅している必要があります。

雇用保険の適用事業主であること: これは全ての雇用関係助成金の基本要件です。

中途採用計画を策定し、労働局に提出・実施すること: 本助成金の核となる要件です。後述する計画を期間内に策定し、管轄の労働局へ提出しなければなりません。

適切な労務管理を行っていること:

- 解雇等の制限: 中途採用計画の提出日前日から遡って6か月の間に、事業主都合による解雇等(退職勧奨を含む)を行っていないこと。また、計画期間中から支給決定日までの間も同様です。

- 特定受給資格者の多発がないこと: 計画提出日における被保険者数の6%を超える離職者(かつ4人以上)が、倒産・解雇等の理由で発生していないこと。

過去に本コースの助成を受けていないこと: 原則として、過去に同様の取り組みで本助成金を受給した事業主は対象外です。

情報公表の義務(大企業のみ): 常時雇用する労働者が301人以上の企業は、直近3事業年度の正規雇用労働者の中途採用比率を公表していることが必要です。

不支給要件に該当しないこと:

- 過去5年以内に雇用関係助成金の不正受給がないこと。

- 申請年度の前年度より前の労働保険料を滞納していないこと。

- 過去1年以内に労働関係法令の違反がないこと。

- 風俗営業等関係事業主でないこと。

- 事業主や役員が暴力団と関係を有していないこと。

2. 支給対象となる労働者(採用する人材)の主な要件

計画期間中に採用する労働者が、以下のすべての要件を満たす必要があります。

中途採用者であること:

学校卒業後すぐに就職する「新規学卒者」や、それに準ずる枠組み(第二新卒枠など)で採用された者以外であることが明確である必要があります。

正規雇用のフルタイム労働者であること:

- 期間の定めのない労働契約を締結していること。

- パートタイム労働者でないこと(一週間の所定労働時間が、同一事業所の通常の労働者と比較して短い労働者でないこと)。

雇用保険の被保険者であること:

雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられること。

過去に申請事業主と関係がないこと:

- 雇入れ日の前日から遡って過去1年間に、申請事業主の事業所で雇用、出向、派遣、請負、委任のいずれかの関係で就労したことがないこと。

- また、過去1年間に、申請事業主と資本的・経済的に密接な関係にある関連企業(親子会社など)に雇用されていた者でないこと。

【コースⒷ(45歳以上)の場合のみ追加される要件】

- 雇入れ日時点の年齢が満45歳以上であること。

対象にするために:助成金活用のための2つのコースと達成すべき目標

本助成金を活用するには、まず「中途採用計画」を策定し、その計画に沿って「雇用管理制度の整備」と「対象者の採用」を一体的に進める必要があります。企業の状況や目標に応じて、以下の2つのコースからどちらを目指すかを選択します。

コース共通の必須アクション:計画と制度整備

どちらのコースを選択するにせよ、以下の取り組みは必須となります。

「中途採用計画」の策定と提出

本助成金の出発点です。以下の要素を盛り込んだ、計画期間1年間の計画書を作成し、管轄の労働局に提出します。

- 雇用管理制度の整備計画: 中途採用者が活躍できる環境を整えるため、募集・採用以外の分野(例:労働時間・休日、評価・処遇制度、福利厚生など)で、新規学卒者と基本的に同等の制度を適用することを明記します。もし制度が未整備の場合は、計画期間内に整備する具体的なスケジュールを記載します。

- 中途採用の拡大計画: 採用予定職種、人数、時期、配置予定部署、採用時の評価方法、そして採用後のモデルキャリアを具体的に計画します。「採用後にどのようなキャリアを歩めるのか」を明示することが、中途採用者の定着に繋がる重要なポイントです。

雇用管理制度の整備の実施

計画書に記載した通りに、雇用管理制度の整備を実行します。就業規則や賃金規程の改定、新たな評価制度の導入などがこれにあたります。単なる計画だけでなく、実際に制度を整備・運用したことが支給申請時に問われます。

2名以上の対象者の採用

計画期間の1年間で、対象となる労働者を2名以上、期間の定めのない正社員として雇い入れる必要があります。

高い定着率の維持

採用した対象者のうち、計画期間終了から6か月が経過した時点で、離職した者の割合が20%未満であること、つまり8割以上が定着している必要があります。

コースA:中途採用率の拡大(支給額50万円)

若手からベテランまで、幅広く中途採用を拡大したい企業向けのコースです。

達成目標:中途採用率を20ポイント以上、引き上げる

計画期間(1年間)の中途採用率が、計画開始前の過去3年間の中途採用率と比較して20パーセンテージポイント以上上昇していることが必要です。

計算方法の解説

- ①計画開始前の過去3年間の中途採用率 = (過去3年間に採用した中途採用者数) ÷ (過去3年間に採用した全正規雇用労働者数) × 100
- ②計画期間1年間の中途採用率 = (計画期間中に採用した中途採用者数) ÷ (計画期間中に採用した全正規雇用労働者数) × 100
- 判定: `② - ① ≧ 20ポイント`

具体例:

過去3年間の全採用者が20名、うち中途採用が6名だった場合、①の中途採用率は30%です。この企業が助成金を受給するには、計画期間中の中途採用率を50%以上(30% + 20%)にする必要があります。例えば、計画期間中に10名採用した場合、そのうち5名以上が中途採用者であれば要件を満たします。

コースB:45歳以上の中途採用率の拡大(支給額100万円)

豊富な経験を持つミドル・シニア層を積極的に活用し、事業の中核人材として迎え入れたい企業向けの、より手厚いコースです。

達成目標(2段階):

1. 45歳以上の中途採用率を10ポイント以上、引き上げる

計画期間中の45歳以上の中途採用率が、計画開始前の過去3年間の45歳以上の中途採用率と比較して10パーセンテージポイント以上上昇している必要があります。

2. 採用した45歳以上の対象者全員の賃金を5%以上アップさせる

これがコースBの最大の特徴です。計画期間中に採用した45歳以上の対象者全員について、雇入れ後の6か月間の各月に支払われる賃金が、その方が直前の勤務先で得ていた賃金と比較して、いずれの月も5%以上上昇していることが絶対条件です。

賃金上昇の確認方法

- 離職前賃金の確認: 応募者本人の同意を得た上で、「再就職援助計画対象労働者証明書」「給与明細」「源泉徴収票」などの書類で離職前の賃金(毎月決まって支払われる賃金)を確認します。

- 雇入れ後賃金の確認: 雇入れ後6か月間の賃金台帳と照合し、すべての月で5%以上の上昇が実現できているかを確認します。

必要書類:計画届から支給申請までの完全ガイド

本助成金の手続きは、事前の「計画フェーズ」と、計画期間終了後の「支給申請フェーズ」の2段階に分かれています。

フェーズ1:中途採用計画の届出に必要な書類

以下の書類を、計画期間の開始日の前日までに(6か月前から提出可能)、管轄の労働局に提出します。

中途採用計画(変更)届(様式第1号): 計画の全体像を記載するメイン書類です。

支給要件確認書(様式第3号): 助成金の受給資格があることを申告する書類です。

中途採用率算定対象一覧(計画期間前)(様式第4号): 計画開始前の過去3年間の採用実績を記載し、基準となる中途採用率を算出するための書類です。

添付書類:

- 雇用管理制度の内容がわかる書類(就業規則、賃金規程、評価規程など)。未整備の場合は、整備計画を添付します。

- (大企業の場合)中途採用比率を公表していることがわかる資料(自社ホームページの写しなど)。

フェーズ2:支給申請に必要な書類

以下の書類を、計画期間が終了した日の翌日から起算して6か月を経過した日の翌日から2か月以内に、管轄の労働局に提出します。

支給申請書(様式第7号): 支給申請のメイン書類です。

中途採用率算定対象一覧(計画期間)(様式第8号): 計画期間中の採用実績を記載し、目標達成を確認するための書類です。

支給対象者雇用状況等申立書(様式第9号): 採用した対象者一人ひとりについて作成します。

添付書類:

- 計画期間中に整備した雇用管理制度に関する書類(改定後の就業規則など)。

- 対象者の雇用契約書または雇入通知書の写し。

- 計画期間中およびその後6か月間の対象者の賃金台帳および出勤簿の写し。

- 【コースBの場合】対象者の離職前賃金が確認できる書類(給与明細の写しなど)。

必要手続き:計画から助成金受給までのロードマップ

助成金を受給するまでのプロセスを、時系列に沿って具体的に解説します。各ステップの期限管理が成功の鍵です。

【STEP 1】中途採用計画の策定と制度整備の準備(計画開始の6か月前~前日)

自社の課題を分析し、どのような人材が必要か、どのような制度を整備すべきかを検討し、「中途採用計画」を策定します。

【STEP 2】計画届の提出(計画開始日の前日まで)

作成した計画届と添付書類一式を、管轄の労働局に提出します。この提出がなければ、その後の取り組みは全て助成対象外となります。

【STEP 3】雇用管理制度の整備と中途採用の実施(計画期間の1年間)

計画書に沿って、制度整備と採用活動を並行して進めます。採用面接時には、応募者が過去1年間に自社や関連会社で勤務していないかを確認することも重要です。

【STEP 4】支給申請(期限厳守)

計画期間が終了したら、そこから申請準備を開始します。申請期限は計画期間終了日の翌日から起算して6か月を経過した日の翌日から2か月以内です。例えば、2025年1月1日~12月31日の計画の場合、申請期間は2026年7月1日~8月31日となります。この複雑な期限設定を間違えないよう、厳重なスケジュール管理が必要です。

【STEP 5】審査・支給決定・入金

提出された書類に基づき、労働局で審査が行われます。審査には通常数か月かかり、無事に支給が決定されると通知が届き、指定した口座に助成金が振り込まれます。

まとめ:戦略的な人材投資で企業の未来を築く

早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)は、単に採用人数に応じて支給される単純な助成金ではありません。「制度を整備し、環境を整え、その上で採用を拡大する」という、企業の採用力と組織力を根本から強化する取り組みを支援する、非常に価値の高い制度です。

この制度を最大限に活用することで、企業は以下の大きなメリットを得られます。

採用力の強化: 魅力的な雇用管理制度とキャリアパスを整備・明示することで、優秀な中途採用者の応募が増え、採用競争において優位に立てます。

定着率の向上: 中途採用者が安心して長く働ける環境を整えることで、早期離職を防ぎ、採用・教育コストの無駄をなくします。

組織の活性化: 多様な経験を持つ中途採用者が活躍することで、組織に新しい視点やスキルがもたらされ、イノベーションが促進されます。

まとまった助成金の受給: 取り組みが成功すれば、50万円または100万円というまとまった額が支給され、制度整備や採用活動にかかったコストを十分に補填できます。

成功の鍵は、事前の綿密な「中途採用計画」の策定と、計画期間中の着実な実行にあります。手続きが複雑で、自社だけでの対応が難しいと感じる場合は、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けながら進めることも有効な選択肢です。この助成金を、人手不足を乗り越え、企業の次なる成長ステージへの飛躍を遂げるための戦略的な一手として、ぜひご活用ください。

補助金・助成金に関するよくある質問

この補助金を自社で使えるか確認するにはどうすればよいですか?

補助金には「対象事業者」「対象経費」「補助率・上限額」「公募期間」という4つの基本条件があります。まず対象事業者要件(業種・従業員数・資本金など)を確認し、次に自社で予定している投資や経費が対象経費に該当するかを公募要領でチェックしてください。判断に迷う場合は、認定経営革新等支援機関や補助金申請の実務経験がある行政書士・税理士への相談が確実です。

補助金の申請にはどのような書類が必要ですか?

一般的には「事業計画書」「見積書(相見積もりが必要な場合あり)」「登記簿謄本(法人の場合)」「直近2期分の決算書」「経費明細書」「納税証明書」などが必要です。補助金ごとに追加書類が指定されるため、必ず最新の公募要領で確認してください。GビズIDプライムが事前に必要な電子申請の補助金も増えています。

補助金の申請から入金までどれくらいかかりますか?

標準的には、申請から採択発表まで1〜3ヶ月、採択後の交付決定・事業実施・実績報告・確定検査を経て入金まで、全体で6ヶ月〜1年程度かかるのが一般的です。補助金は原則「後払い(精算払い)」のため、事業実施中の資金繰りも事前に計画しておく必要があります。

採択率を上げるために最も重要なポイントは何ですか?

(1) 公募要領を隅々まで読み込み加点要素を漏らさない、(2) 事業計画の数値目標を具体的に書く(売上・生産性・雇用など)、(3) 補助事業の必要性・効果を経営課題と結びつけて論理的に説明する、(4) 早めに準備を始めて推敲する時間を確保する、(5) 認定経営革新等支援機関や補助金専門家のチェックを受ける。この5点が採択率を大きく左右します。

申請が不採択だった場合、再申請はできますか?

多くの補助金は同一年度内・翌年度でも再申請が可能です。不採択通知には通常、不採択理由の概要が示されているので、その点を重点的に修正して次回公募に再チャレンジしましょう。特に事業計画の論理性・数値目標の具体性・加点項目の取得は、改善により採択につながることが多い要素です。

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